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通知表の所見をAIで書く前に――学習評価と文案作成を分ける

ELYSAI編集部8分
通知表の所見をAIで書く前に――学習評価と文案作成を分ける

学期末が近づき、学年会で「通知表の所見を生成AIで下書きできないか」という話が出たとします。教員の手元には、授業ごとの振り返り、作品、自己評価、観察メモがあります。文章を整える時間は減らしたい一方、記録が少ない児童生徒ほど、AIが無難な表現で空白を埋めるおそれがあります。

本稿の立場は明確です。生成AIに任せるのは、教員が確定した評価根拠を所見文へ組み立てる作業までです。何を評価するか、どの記録を根拠にするか、根拠が足りないときにどう扱うかは、先に人が決めます。文章が自然かどうかより、各文を元の記録へ戻って確かめられるかを本番条件に据えるべきです。

所見案の作成と、学習評価の判断を分ける

文部科学省のガイドラインVer.2.0は、校務での生成AI利用を、教職員が出力の適切性を判断できる範囲に置き、最終的には教職員自身が確認・推敲して成果物に責任を持つよう求めています。同時に、授業の感想の集約や各種文書のたたき台作成を活用例として挙げています。[1]

実証も、文章作成だけにはとどまりません。岩倉市は、学習履歴、児童生徒の自己評価、教師の観察記録から通知表や指導要録の所見案を作る用途を、校務生成AIの重点ユースケースとして検討しました。報告書は、授業改善支援、不登校対応支援と並ぶ「所見作成支援」として位置付けています。[2] これは実証段階の取り組みであり、生成された所見の妥当性や学習成果が独立に証明されたという意味ではありません。

ここで分けたいのは、評価判断と文案作成です。前者は、学習目標に照らして記録を選び、到達や変化を判断する仕事です。後者は、確定した判断を、児童生徒と保護者に伝わる文章へ整える仕事です。AIに両方を一度に依頼すると、評価根拠が足りないのか、文章表現が弱いのかを切り分けられません。

先に「根拠台帳」を作り、文章は後から生成する

所見生成の前に、児童生徒ごとの根拠台帳を用意します。最低限、対象となる学習目標、記録の種類、記録日、具体的な事実、教員の判断、所見に使えるかどうかを分けます。たとえば、「9月のグループ発表で、資料の出典を二か所確認して説明を修正した」という架空の記録なら、「発表に積極的だった」よりも後から事実を確かめやすくなります。

台帳には、使わない記録も残します。欠席期間が長い、提出物が少ない、別の教員しか見ていない、といった不足を、ゼロや否定的評価へ置き換えてはいけません。「記録なし」「判断保留」「本人への確認が必要」を別の状態として扱います。学年末に記録を集め始めるのでは遅いため、年度当初に記録の粒度をそろえ、学期途中に欠け方を点検してください。

現実的な選択肢は三つあります。第一は、個人情報を入れず、汎用AIに表現例だけを出させる方法です。安全に始めやすい一方、児童生徒固有の根拠には結び付きません。第二は、決まった文型へ教員が事実を埋める方法です。説明しやすい反面、記録の組み合わせが増えると作業負担が残ります。第三は、管理された環境で根拠台帳を参照させ、所見案と参照元を一緒に出す方法です。個別性は高められますが、環境整備だけで評価判断まで正しくなるわけではありません。

したがって、最初の試作では第三の方法を狭く使います。AIには「新しい評価を推測しない」「根拠がない長所や改善点を書かない」「各文に参照記録の識別子を付ける」と指示します。教員は文章を直す前に、参照先と意味が一致しているかを確認します。読みやすく直した後にも、評価の強さが変わっていないかを再点検します。

要約で消える少数の記録を、評価から落とさない

児童生徒の振り返りをまとめる用途は、学校現場で試されています。春日井市立藤山台中学校は、ソーシャルスキルトレーニング後の感想を生成AIで集約し、分類した事例を報告しています。[3] 集団の傾向をつかむ用途と、一人の学習評価を決める用途は分けて考える必要があります。

要約は、頻出する意見を目立たせる一方、少数だが重要な変化を薄める可能性があります。たとえば、普段は記述が短い児童が初めて具体的な疑問を書いた場面では、学級全体の要約より一件の原文が重要です。所見の根拠を集める処理では、件数の多い分類だけを返さず、分類できなかった記録、以前と傾向が変わった記録、教員が要確認とした記録を別枠で出します。

試験用データには、記録が豊富な児童生徒だけでなく、転入直後、長期欠席、複数言語を使う、特別な支援を受ける、といった架空の条件を含めます。所見案の流暢さではなく、根拠のない文を作らなかった割合、重要な記録を落とさなかった割合、教員が参照元を確認する時間を測ります。確認時間が減らないなら、生成対象を一部の定型表現に戻す判断も必要です。

成績情報を扱える環境と、扱ってよい範囲は別です

文部科学省のガイドラインは、適切な対策を講じた個別契約の環境などを除き、重要性の高い成績情報等をプロンプトへ入力してはならないとしています。[1] 2026年の実証報告では、評定一覧表、出席簿、指導要録、ワークシートや作品などを扱う検証環境と、指導要録を参照した所見作成支援が示されました。これは受託事業者による実証報告であり、本番運用の標準や効果を保証するものではありません。[4]

教育委員会と学校は、入力可否を「氏名を消したか」だけで決めないことが重要です。学年、組、珍しい活動歴、自由記述を組み合わせると、校内で本人を推測できるリスクがあります。誰がどの学級の台帳を読めるか、異動後に権限が残らないか、生成履歴や出力文がどこに保存されるかまで確認します。

個人情報保護委員会は、学校で起きた漏えい等の報告について、2023年4月から2025年4月までのおよそ2年度分を分析し、教育委員会や教職員向けに原因と再発防止策例を公表しています。[5] 所見生成だけを独立したAI機能として調達せず、教育委員会の情報管理、校務支援システム、端末とアカウントの運用に接続して審査する必要があります。

学年末ではなく、年度途中に止められる形で試す

導入順序は学校暦に合わせます。年度当初に評価項目と根拠台帳を決め、第一学期の途中で架空データによる試験を行い、学期末前に限定した学級で並行運用します。AI案を使わずに作った所見も残し、根拠の抜け、表現の偏り、確認時間を比較します。通知表を確定する直前に初めて使う進め方では、問題が見つかっても元の運用へ戻す時間がありません。

東京都教育委員会は2024年度、継続9校と新規11校の計20校を生成AI研究校に指定し、AIリテラシー、授業利用、教職員の校務利用を研究対象としました。[6] 全校一斉導入の前に、校種や支援体制の異なる学校で運用条件を確かめる進め方は、教育委員会が調達仕様を作る際にも参考になります。

ただし、試行校で使えた手順をそのまま横展開してはいけません。導入前に、GIGA端末から校務系データへ接続できる範囲、学級担任と専科教員の役割、校内での確認者、年度替わりの権限更新を各校で確かめます。通信障害やサービス停止時には、台帳から教員が所見を作れる退避手順も残します。

評価根拠を記録する余力がなく、教員がAI案の参照元を一文ずつ確認できないという場合には向きません。その状態で文章生成を先に入れると、整った文面が不足した記録を覆い隠します。まず記録方法と校内の確認分担を見直すべきです。

実務への示唆

提言1:評価判断を確定してから、文章化をAIへ渡してください。 学習目標、具体的事実、教員の判断を根拠台帳に分け、AIには新しい評価を推測させません。

提言2:所見案には参照元を付け、少数の記録を別枠で確認してください。 集約結果だけでは、児童生徒の変化や支援上の手掛かりを落とす可能性があります。

提言3:教育委員会の調達条件に、学校暦と撤退手順を入れてください。 権限更新、保存先、確認時間、停止時の代替運用まで試し、限定運用から広げるかを判断します。

参考資料

  1. 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」Ver.2.0(2024-12-26、確認日:2026-09-24)
  2. 文部科学省「次世代の校務デジタル化推進実証事業(生成AIの校務での利活用に関する実証研究)成果報告書」(2025-03、令和6年度事業、確認日:2026-09-24)
  3. リーディングDXスクール「生成AIパイロット校 成果報告会」(2024-04-23、確認日:2026-09-24)
  4. Sky株式会社「R7年度『セキュアな環境における生成AIの校務利用の実証研究事業』【事業III】成果報告」(2026-03-17、事業者提出資料、確認日:2026-09-24)
  5. 個人情報保護委員会「学校における個人情報の漏えい等事案を踏まえた個人情報の取扱いに関する留意点について」(2025-06-25、確認日:2026-09-24)
  6. 東京都教育委員会「令和6年度生成AI研究校事業について」(2024-05-27更新、確認日:2026-09-24)

本記事はAIを活用して作成し、公開前に自動レビューを実施しています。情報の確認日:2026-09-24。

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